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心理的安全性を高める管理職の役割とは|「知っている」から「機能する」職場へ

AJ編集部2026/10/01
心理的安全性を高める管理職の役割とは|「知っている」から「機能する」職場へ

心理的安全性について学んだ。1on1も行っている。社内でも「心理的安全性は大切だ」という認識は広がっている。それでも、会議では意見が出ず、困ったことがあっても相談が遅れる。チームによって、対話のしやすさにも差がある。そんな状況に心当たりはないでしょうか。

実際、ザ・アカデミージャパンが支援したある企業でも、似た状況がありました。グループ会社を含む約3万人規模で、心理的安全性の基礎理解や共通言語は浸透していました。一方で、1on1などの個別対話は行われていても、チーム全体での対話は限定的で、困りごとや違和感があっても発言や相談に至らないケースが残っていました。マネジャー側にも、「必要なのは分かるが、具体的にどう関わればいいのかが明確ではない」という課題がありました。

つまり、次に必要だったのは、心理的安全性をさらに「知る」ことではありませんでした。知っていることを、日々の仕事の中で機能させること。そこに、管理職の役割があります。

管理職の役割は、「もっと発言して」と求めることではない

心理的安全性を高めようとすると、「もっと自由に発言してください」「何かあれば遠慮なく相談してください」と伝えたくなります。もちろん、それ自体が悪いわけではありません。ただ、それだけで人が話し始めるとは限りません。

たとえば会議で、「このスケジュールでは少し厳しいと思います」という意見が出たとします。そのとき、「でも、もう決まっているから」とすぐに結論を返すのか。それとも、「どの部分が気になっている?」と、一度その意見を受け取るのか。ここには大きな違いがあります。

後者だからといって、部下の意見を採用する必要はありません。管理職には判断する責任があります。ただし、理解することと、同意することは別です。まず相手が何を見て、なぜそう考えたのかを知り、そのうえで判断する。この順番があるだけで、対話のあり方は変わります。

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心理的安全性があるから、意見の違いを扱える

心理的安全性の基本的な考え方や、「なぜ人は黙るのか」「どうすれば心理的安全性を高められるのか」については、『心理的安全性とは?“号令”では高まらない理由と高め方・つくり方』で詳しく解説しています。

心理的安全性という言葉から、「安心できる職場」「優しい職場」を想像する人もいるかもしれません。しかし、本来の心理的安全性は、単に居心地がいいという意味ではありません。

Amy C. Edmondsonは、心理的安全性を「チームが対人的なリスクを取っても安全だという、共有された信念」として研究しています。1999年に製造企業51チームを対象に行った研究では、心理的安全性とチームの学習行動との関連が示されました。さらにNembhardとEdmondsonは、23の新生児集中治療室を対象にした研究で、リーダーがメンバーの発言や貢献を招き、それを尊重する姿勢が心理的安全性を予測することを示しています。

ここで大切なのは、リーダーが何でも受け入れることではなく、異なる意見が出てくる余地をつくることだと私たちは考えています。心理的安全性が高い状態とは、意見の違いがなくなることではありません。むしろ、違いが表に出てきても、関係を壊さずに扱える状態です。その意味で、管理職に求められるのは「正しい答えを最初に示すこと」だけではなく、チームが考えられる余白をつくることでもあります。

なぜ管理職は分かっていても難しいのか

とはいえ、「相手の話を最後まで聞こう」「すぐに否定しないようにしよう」ということは、多くの管理職がすでに理解しているでしょう。それでも実際の仕事では、そうできない場面があります。

自分が決めた方針に反対されたとき。納期が迫っているときに、新たな問題を持ち込まれたとき。部下からミスを報告されたとき。1on1で「今の仕事には、あまり意味を感じていません」と言われたとき。そんな場面では、「なぜ今になって言うんだ」「こちらも考えて決めている」「まずあなた自身にも問題があるのではないか」という気持ちが湧くことがあります。

これは、管理職として未熟だから起こるという単純な話ではありません。自分の考えや立場、これまでの努力が否定されたように感じれば、人は誰でも防衛的になりやすいものです。だからこそ、相手へのコミュニケーション技術を学ぶだけでは足りず、まず自分自身の内側で何が起きているのかを見る必要があります。ここが、AJの「心理的安全性をつくるフラットモデル」の出発点です。

フラットモデルが「自己理解」から始まる理由

AJでは、心理的安全性をつくるプロセスを自己理解 → 他者理解 → 相互理解という流れで整理しており、心理的安全性研修でもこのフラットモデルを実践の土台として扱っています。

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最初の「自己理解」では、自分自身の防衛心に目を向けます。部下から違う意見を言われたとき、自分は何を感じたのか。腹が立ったのか、焦ったのか、それとも自分の判断を否定されたように感じたのか。それに気づけるだけで、すぐに相手へ言葉を返すのではなく、一度考える余地が生まれます。AJでは、この段階を「自分の防衛心を和らげる」としています。

次の「他者理解」では、「なぜそんなことを言うんだ」から「なぜ、この人はそう考えたのだろう」へと視点を移し、相手の強みや価値観、置かれている状況に関心を向けます。フラットモデルでは、これを「相手の自尊心を高める」段階として整理しています。

その先にあるのが「相互理解」です。どちらが正しく、どちらが間違っているのかを決める前に、それぞれが見ているものを出し合い、「では、どうすれば仕事を前に進められるか」を一緒に考えます。AJでは、これを「お互いに歩み寄る」と表現しています。

もちろん、管理職と部下の役割が同じになるわけではありません。責任も違えば、最終的な意思決定を管理職が行う場面もあります。それでも、役職が上だからといって、意見まで上になる必要はありません。フラットモデルが目指しているのは、役職をなくすことではなく、違う立場の人同士が対話できる関係です。

AJの心理的安全性研修では、自己理解・他者理解・相互理解のフラットモデルを軸に、管理職・リーダーが職場で実践できる形まで扱います。
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約800名の事例では、管理職だけを変えなかった

もう一つ重要なのは、心理的安全性を高めるという話を、すべて「管理職のコミュニケーション能力」の問題にしてしまわないことです。

AJがある事業部の約800名を2年間支援したケースでは、チーム内外のコミュニケーションが限られている、忙しさから助けを求めにくい、リーダーによってチーム運営にばらつきがある、といった複数の課題が重なっていました。そこで行ったのは、管理職向けの研修だけではありません。講演、管理職研修、現場での実践、効果測定、EQワークショップなどを組み合わせ、2年間かけて組織全体へ展開しています。

これは、心理的安全性が、管理職一人によって「与えられるもの」ではないからです。メンバー同士の関係性もあれば、仕事の進め方もあり、忙しさや組織構造の影響もあります。心理的安全性は、チームの中でつくられていくものです。

それでも管理職を重視するのには理由があります。管理職の日々の振る舞いは、メンバーが「このチームでは、違うことを言ってもいいのか」を判断する材料になるからです。

会議では「正解を出す人」になりすぎない

管理職は多くの場合、その場で最も経験のある人です。だからこそ答えも見えやすく、会議で議論が始まったときに「それならA案でいこう」と早く決めることもできます。スピードが求められる場面では、それが正しいこともあります。

ただ、それを毎回繰り返していると、メンバーは次第に「上司の答えを当てること」に集中するようになります。管理職が答えを持っていても、「みんなにはどう見えている?」と一度聞いてみる。自分の意見は最後に出してみる。違う意見が出たら、「そう考えた理由をもう少し聞かせて」と掘り下げてみる。

会議で心理的安全性を高めるというのは、発言の回数を増やすことだけではありません。チームの中にある情報が、意思決定の前に表に出てくる状態をつくることです。

1on1では、本音が出てきた瞬間を急いで解決しない

1on1で「何か困っていることはある?」と聞いたところ、部下から「実は、今の仕事にあまり意味を感じていません」と言われたとします。管理職としては、「こう考えてみたら?」「もっとこうすれば面白くなるよ」と助言したくなるところです。

でも、そこで少し待ってみる。「そう感じているんだね」「いつ頃から?」「どんなところで、そう感じる?」と聞き、解決策を出す前に、相手が何を見ているのかを知ろうとする。これは遠回りに見えるかもしれません。しかし、話を十分に理解しないまま答えを出すよりも、その後の対話は深まりやすくなります。

1on1を「上司が答えを与える時間」ではなく、一緒に考える時間にできるかどうか。そこにも、フラットモデルの考え方が表れます。

ミスの報告では、「なぜ?」を少しだけ後ろに置く

心理的安全性が最も分かりやすく表れるのは、良い報告よりも悪い報告かもしれません。部下が「確認漏れがありました」と報告してきた瞬間に、「なんで確認しなかったの?」と言われるのか、「分かった。まず何が起きたか教えて」と言われるのかで、その後の会話は大きく変わります。

もちろん、責任を曖昧にする必要はありません。原因を確認し、必要な改善を行い、場合によっては責任を問うことも必要です。ただ、事実を知ることと、責任を問うことの順番を分けることが大切です。まず情報を出せる状態をつくり、その後で何が起きたのかを一緒に整理していきます。

問題がまったく起きない組織をつくることはできません。だからこそ、悪い情報が早く上がってくることには大きな意味があります。

管理職がつくるのは「安全」そのものではなく、対話が始まる条件

約3万人規模の取り組みでは、心理的安全性への理解が広がっていても、そこからさらに「現場で機能する状態」へ進む必要がありました。約800名規模の取り組みでは、管理職だけでなく、メンバーを含めた組織全体への働きかけが行われました。この二つの事例を見ると、心理的安全性を一つのコミュニケーション技法として扱うだけでは十分ではないことが分かります。

管理職が一人で心理的安全性をつくるわけではありません。それでも、管理職にできることはあります。会議で違う意見が出たとき、1on1で予想していなかった本音が出たとき、ミスや問題を報告されたとき。そこで、すぐに答えを返すのではなく、一度相手の見ているものを知ろうとする。必要であれば、自分自身がなぜそう反応しているのかにも目を向ける。そして、互いの考えを出し合ったうえで、仕事を前に進めていく。

管理職に求められているのは、「もっと話してください」と言い続けることではないのかもしれません。話すことが仕事を前に進めることにつながる、そう感じられる対話を一つずつ増やしていくことです。

心理的安全性が「知っている言葉」から「機能する状態」に変わるのは、そうした日常の積み重ねからだと、私たちは考えています。


ザ・アカデミージャパンの心理的安全性研修では、心理的安全性を単なるコミュニケーションスキルとして扱うのではなく、独自の「心理的安全性をつくるフラットモデル」を用いて、自己理解・他者理解・相互理解の3つの観点から日常の関係性を見直します。管理職研修から、メンバーを含めた組織全体での取り組みまで、貴社の状況に合わせて設計します。

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