これからの組織開発

仕組みを整えるだけでは、人と組織は変わらない
変化が激しく、将来の予測が難しい時代において、企業が持続的に成長していくためには、
イノベーションの創出、生産性の向上、そして働く人のエンゲージメント向上が欠かせません。
近年、これらのキーワードは経営層やメディアでも頻繁に取り上げられるようになりました。
そのため、多くの企業ではすでに「働きがいのある職場づくり」「挑戦する風土の醸成」「従業員エンゲージメントの向上」「多様な人材がイキイキと活躍できる職場づくり」といった方針が掲げられているのではないでしょうか。
また、それらの方針を実現するために、さまざまな施策も導入されています。
たとえば、ダイバーシティ推進、DX推進、SDGsへの取り組み、ジョブ型雇用、OKR、1on1ミーティング、
エンゲージメントサーベイなどです。オープンでフラットな組織づくりに向けて、制度や仕組みを見直す動きは、今後さらに広がっていくでしょう。
しかし、ここで一度立ち止まって考える必要があります。
制度を導入すれば、本当に組織は変わるのでしょうか。サーベイを実施すれば、エンゲージメントは高まるのでしょうか。1on1を始めれば、社員は自ら考え、挑戦するようになるのでしょうか。
もちろん、制度や仕組みは重要です。
しかし、それだけでは人と組織は変わりません。
なぜなら、組織を動かしているのは制度そのものではなく、そこで働く一人ひとりの意識、関係性、そして仕事に向き合う姿勢だからです。

これまでの組織マネジメントの限界
かつての組織マネジメントでは、企業の売上や利益の拡大を目的に、大きな目標を掲げ、社員を鼓舞し、効率的に業務を遂行するための体制を整えることが重視されてきました。
たとえば、「世界シェアNo.1を目指す」といった大きなビジョンを掲げ、その達成に向けて組織を階層化し、役割を明確にし、上司が部下の行動を管理する。そして、会社の利益に貢献した社員には役職や給与で報いることで、会社へのロイヤリティを高める。
このようなマネジメントは、一定の環境下では大きな力を発揮してきました。
市場が成長し、目標が明確で、正解に近い方法をいかに早く実行するかが重要だった時代には、合理性や効率性を追求する組織運営が成果につながりやすかったからです。
しかし、今の時代は大きく変わりました。
顧客のニーズは多様化し、社会課題は複雑化し、働く人の価値観やキャリア観も大きく変化しています。上から示された目標に従い、決められた役割を効率よくこなすだけでは、新しい価値を生み出すことが難しくなっています。だからこそ、多くの企業が「新しい組織の形」を模索しているのです。
これから求められる人材像
企業によって掲げる方針や導入する施策は異なります。しかし、これからの組織開発において目指すべき人材像には、ある共通点があります。
それは、仕事や会社に愛着を持ちながら、社会や顧客の課題に向かって、自分らしい貢献ができる人材です。
ここでいう「自分らしい貢献」とは、単に好きなことを自由に行うという意味ではありません。
自分の強みや価値観を理解し、それを組織や顧客、社会の課題解決に結びつけていくことです。
言い換えれば、会社から与えられた役割をこなすだけでなく、自分なりに仕事の意味を見出し、自ら考え、周囲と協働しながら価値を生み出していく人材です。
このような人材が増えていくことが、結果としてイノベーションの促進、生産性の向上、エンゲージメントの向上につながっていきます。
自分らしい貢献に必要なもの
では、会社がオープンでフラットな組織づくりに取り組み、働く人に必要な知識やスキルを提供すれば、自分らしい貢献ができる人材は自然に育つのでしょうか。私たちは、そこにはまだ足りないピースがあると考えています。
それは、働く人が自走するための原動力となる「仕事の意義」です。
どれだけ制度を整えても、どれだけ学習機会を提供しても、本人が自分の仕事に意味を感じられなければ、主体的な行動は生まれにくくなります。逆に、自分の仕事が誰の役に立っているのか、何につながっているのかを実感できるとき、人は自ら考え、動き出す力を持つようになります。
つまり、これからの組織開発において重要なのは、単に制度や仕組みを導入することではありません。
働く人一人ひとりが、
「自分の仕事には意味がある」
「自分の強みを活かして貢献できている」
「この組織で働くことに価値を感じられる」と思える状態をつくることです。
仕事の意義が見えにくくなった時代
かつては、仕事の意義を比較的感じやすい時代がありました。
社会には、目に見える不便や不足が数多く存在していました。そして、それらを解決する商品やサービスは、まだ十分に行き届いていませんでした。
そのため、自社の製品やサービスをより多くの人に届けることが、お客さまの喜びにつながり、社会への貢献にもつながる。その実感を、働く人が自然に持ちやすかったのです。
しかし、今の社会は大きく変化しています。
多くの不便は解消され、商品やサービスはあふれ、競合も増えました。一方で、社会や顧客の課題がなくなったわけではありません。むしろ課題は複雑化し、見えにくくなっています。だからこそ、単に自社の製品やサービスを提供するだけでは、自分たちの仕事の意義を感じにくくなっているのです。
「この仕事は、誰のどのような課題を解決しているのか」
「自分たちは、社会にどのような価値を生み出しているのか」
「自分は、この仕事を通じて何に貢献したいのか」
こうした問いを持たなければ、働く人は仕事の意味を見失いやすくなります。
これからの組織開発に必要なこと
これからの組織開発に必要なのは、制度を整えることだけではありません。
働く人が、仕事の意義を見つめ直し、自分らしい貢献を考えられる場をつくることです。
そのためには、対話が必要です。
内省が必要です。
関係性の質を高めることが必要です。
一人ひとりが、自分の価値観や強み、仕事への向き合い方を見つめ直す。
チームの中で、お互いの考えや想いを共有する。
自分たちの仕事が、顧客や社会にどのような価値をもたらしているのかを考える。
こうしたプロセスを通じて、働く人は自分の仕事に意味を見出しやすくなります。
そして、仕事の意義を感じられる人が増えることで、組織には主体性が生まれます。
挑戦が生まれます。
協働が生まれます。
結果として、組織全体のエンゲージメントや生産性、イノベーションにもつながっていきます。
SDGsやパーパスが示しているもの
近年、SDGsやパーパス経営への関心が高まっています。これは単なる社会的な流行ではありません。多くの企業や働く人が、「自分たちの仕事は何のためにあるのか」を問い直し始めている表れだといえます。
SDGsは、社会課題の方向性を示す一つの手がかりです。
パーパスは、企業の存在意義を見つめ直すための重要な問いです。
しかし、これらを掲げるだけでは十分ではありません。
大切なのは、それを現場で働く一人ひとりの仕事と接続することです。
会社の理念やパーパスが、日々の業務とどうつながっているのか。
自分の仕事が、顧客や社会にどのような価値を生み出しているのか。
自分はその中で、どのように貢献していきたいのか。
この接続が生まれてはじめて、理念や方針は現場で生きたものになります。

これからの組織開発とは
これからの組織開発とは、単に新しい制度を導入することではありません。また、流行している施策を取り入れることでもありません。
働く人一人ひとりが、自分の仕事に意義を見出し、周囲と関わりながら、自分らしい貢献を生み出していく。そのような状態をつくることこそ、これからの組織開発に求められる大きな役割です。
制度や仕組みは、あくまで土台です。
本当に大切なのは、その上で働く人たちが何を感じ、何を考え、どのように行動するかです。
人の内面に目を向け、関係性の質を高め、仕事の意義をともに探求する。
そこから、これからの組織の可能性は広がっていきます。
私たちは、これからの組織開発において、「働く人が仕事の意義を見出し、自分らしい貢献を育てていくこと」が重要なテーマになると考えています。
そして、その問いを皆さまと一緒に探求していきたいと思います。
著者
AJ編集部
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