”失敗を責める”上司が気づかない「生産性を下げている犯人」

米Google社がチームの生産性を高めるための最善の方法として着目した「心理的安全性」。
ハーバードビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授によって提唱されたこの概念は、対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念が共有された状態が形成されることにより、チームの中にどんなことでも話せる安心感が生まれ、生産性の向上に繋がるとされています。
「生産性を高めるための唯一の方法」などと言われたことで注目を集めていますが、心理的安全性が高まることで起こるのは、それだけではありません。良好な人間関係や、建設的で質の高い対話が生まれるなど、変化の影響は広範囲に渡ります。
それだけにミスや失敗を批判する文化が横行すれば、逆の悪影響が生まれかねません。本稿では、心理的安全性が高まることによって起きる変化のうち、みなさんがあまりイメージできていない部分について説明していきたいと思います。
問題への対応や課題の解決が素早くなる!
心理的安全性が高いチームは、チームのメンバー一人ひとりが「自分がどんな行動をとっても、他のメンバーから否定や避難をされることはない」と感じ、実際に遠慮することなく発言や行動ができるような状況にあります。
隠し事などをする必要などなくなり、誰もがオープンに問題点を議論できますので、実際に問題が起こったときの対応が素早く、かつ適切な行動をとれるようになるといえます。
2003年に起きた、NASAのスペースシャトル・コロンビア号空中分解事故を覚えておられるでしょうか。あの時、打ち上げ時のトラブルから機体が損傷したのではないかと感じていた技術者がいたそうです。
しかしそれを管理機構側に伝えても、とりあってもらえなかった。それは管理機構側の方で、上司にこんなこと言って大丈夫だろうかといった心理的な壁ができていて、言えないままになってしまったと。
それがすべての原因ではないのでしょうが、結果的にあの事故が起きてしまったといいます。
似たような事例は医療現場などでも見られるといいます。夜中に病院で看護にあたっている看護師が、この投薬量で大丈夫だろうかとか、このままの状況で大丈夫だろうかと心配になったと。
しかし担当医師はもう帰宅していて、もう寝ている頃だろう。そんなときに連絡したら怒られるのではないだろうかと、悩んだ末に言えなかったと。
一緒に仕事をする中で、どんなことでも話せる、スピークアップできる雰囲気ができていれば、このようなことにはなりません。
必然的に問題や課題を把握するタイミングは早まり、また対応策をチームで協議できることから、適切な対応がとれるようになる。こういった点は、心理的安全性の高いチームでみられることだといえます。
メンバーの仕事を覚えるスピードが早くなる!
心理的安全性の高いチームでは、メンバーが仕事を覚えるスピードが早くなります。しかも単に早いというだけではなく、精緻に覚えることも期待できます。
というのも、仕事を教えるという部分で、チーム内での適切な指導が期待できるからです。たとえば単に仕事のやり方を教えるといったことだけでなく、その理由やノウハウといった点についても説明を受けることで、覚える側も目的意識をもって、仕事についての知識を吸収していくことができます。
また、指導後の振り返りといったシチュエーションにおいては、オープンなディスカッションが行われるケースもあるでしょう。このようなアウトプットの機会が得られることで、知識の具体性や解像度といったものは当然高くなります。
もちろんそれがチーム全員にとっても経験がない、全く新しい仕事であったとしても、チーム内に醸成された相談しやすい雰囲気から、メンバー間でアイデアの共有が行われることになるはずです。実質的にチーム一丸となって新たな業務を進めていくことで、スムーズな業務知識の習得が見込めることでしょう。
また当然のことですが、仕事を覚えられるかどうかということは、人員の定着にも影響します。やはり仕事の出来不出来というのは、人が離れていく理由として1番大きいところです。
仕事を覚えるスピードが上がり、精緻に覚えられるようになるということは、業務スピードが改善されるだけでなく、人員の定着にも影響するといえます。
失敗から学ぶ姿勢が企業文化に取り入れられる
ビジネスのなかで学びが生じるシチュエーションは、成功のタイミングでもありますが、それ以上に貴重なチャンスとなるのが、失敗のタイミングだといえます。失敗を徹底的に分析し、それを昇華させることで、逆に大きな成功を手に入れる機会を得ることができます。
エドモンドソン教授はこの点にも注目しており、企業において重要なことは「失敗から学ぶ組織作りを行うことだ」としています。そのうえで、心理的安全性が高まることによって起きる変化として挙げられるのが、失敗から学ぶ組織が形成されるということです。
心理的安全性の高いチームでは、「自分がどんな行動をとっても、他のメンバーから否定や避難をされることはない」と感じているのですから、批判や非難を恐れて失敗やミスを隠蔽するようなことは起こりません。
むしろ的確なタイミングで報告が行われるはずです。そしてそれに対するメンバーの適切なリカバリーが起こることで、ビジネスにおける学びが生じます。
この繰り返しから、「失敗から学ぶ姿勢」が企業文化に取り入れられることで、企業そのものの強みも増すことになるはずです。
このように、「生産性を高めるための最善の方法」として注目される心理的安全性は、生産性を向上させるだけでなく、様々な角度からチームにプラスの変化をもたらしてくれます。それはひょっとしたら、あなたがチームに対して期待している、大きな変化なのかもしれません。
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著者
AJ編集部
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